参考図書22.栗山ノート

今回紹介する本は、栗山英樹さんが書いた「栗山ノート」です。栗山さんと言えば、2023年のワールドベースボールクラシックで劇的な優勝を果たした日本チームの監督として、あまりにも有名です。また、勉強家としても知られ、栗山さんの書いた本は書店のスポーツ雑誌のコーナーにたくさん並んでいますので、読んだ方も多いかと思います。まだ、読んだことのない人に、少しだけ紹介しておきます。
本の中に、「野球を野球の常識だけで読み解くべきではないという件(くだり)が出てきます。野球と言えば、相手より得点を多くとった方が勝つという単純なゲームで、いいピッチャーと打率の高いバッターがいれば勝てそうに思いますが、実はそうではないというお話です。読売ジャイアンツが、いくら高いお金を払って有名選手をかき集めても優勝できないことが証明しています。また、ワールドベースボールクラッシックので劇的な優勝も、単に「運がよかった」だけではなく、そこに至るまでには監督の綿密な計画に基づく行動があったからこそなのです。
栗山さんは監督時代、入団した選手には本を渡していたそうです。本の内容は、様々な分野で成功した方々の生き方やエピソードが期された短編集で、読み終えたら余白に「自分の人生の約束」を書き、選手寮に入寮する際に持ってきてもらっていたそうです。一流選手は、自分の決めたことはやり通す、自分との約束を守り抜いていることを知っているからで、選手の自覚を促すということでしょう。
野球の話でありながら、生き方の参考になる部分も多いです。生き方というと、自己啓発本のように堅苦しい話が多いのでは、と思われるかもしれませんが、非常にわかりやすい口調で書かれています。私が印象に残った部分を少しだけ紹介しておきますので、ぜひ手に取ってみて下さい。

●野球ノートをつけることと、読書の旅を並行していくと野球を野球の常識だけで読み解くべきではない、という思いに辿りついた。

●嘘をつかない、欲に走らない、相手の気持ちを考える、飽きることなく続ける、自分ではなく周りの人たちの利益を最優先にすることで、何事にも動じない心が宿っていく。

人生では批判する側ではなく、批判される側にいるべきだ。批判される側は、何かを作ったり起こしたりする立場にある。勝てる組織を作っていく私の仕事も、批判される立場にある。それに対して批判をする側は、作られたもの、起こったものに対して意見する立場である。私自身は、何かを作り出す立場に充実感を覚える。

大切なのは、やるか、やらないか。

●のちに「革新」と言われる出来事や発明は、新しく時代を切り開く、未来に遺産(レガシー)を残す、という崇高な思いが起点になっている。「革新」が「常識」になるまでには、改善や改良が必要である。自分の言動を省みて、問題点をあぶり出す。皆に喜んでもらえる新たな価値観を生み出そうとしているのであるから、自己鍛錬は欠かせない。自分がやるべきことを、自分がこうだと決めたことを、ためらわずにやっていく実直に、愚直に、泥臭く、やり続ける

2018年のドラフト1位で入団した吉田輝星選手に、ドラフト直後の指名挨拶の席で「論語と算術」を渡し、表紙周りの余白には短いメッセージを添えた。「人のために尽くす」という共通の利益に向かっていく。誰かに喜んでもらえることが、プレーする上で最大の原動力となる

*栗山さんの考え方も全くのオリジナルではなく、いろいろ勉強した結果としての「先人たちの知恵の結集」かと言えると思います。たくさん書かれている中の一部を紹介します。

●幸運も不運も偶然によるものではなく、自分の在り方が引き寄せるものであって、失敗をしたら必ず自分のせいにせよ。(幸田露伴)

●すべて形式に流れると、精神が乏しくなる。何でも日々新たにという心掛けが大事である。(渋沢栄一)

●成功は常に苦心の日に在り、敗時は多く得意の時に因ることを覚る。(安岡正篤)順境に驕らず、逆境に怯まない。

●心田を耕す。(二宮尊徳)
 田んぼや畑と同じように心も耕していかないと、ヒビが割れて栄養不足になってしまう。


●人間ができていないと環境に支配される。(安岡正篤)

●人間は自ら気づき自ら克服した事柄のみが真に自己の力となる。(森信三

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