今回紹介する本は、小倉昌夫さんの書かれた「経営学」です。小倉さんと言えば、クロネコヤマトの創業者で優れた経営者として有名な方ですから、ご存じの方も多いと思います。この本もビジネス本の中では古典的名著の一つですから、多くの方が読まれていると思います。ただ、最初の発行年がすぐには出てこないほど時間がたっていますので、今の若い方は知らないかもしれません。
宅急便が注目され始めたとき、そっくり真似して始めた会社が35社あったそうです。ヤマトの成功は「クロネコヤマトの宅急便」というコマーシャルにあると考えた他の会社は動物マークを作り宣伝を始めたそうですが、1社を除いてすべて撤退という結果に終わりました。
古い本ですが、ビジネスや経営を行っていく上で大切な考え方というのは、今も色褪せていません。
私が読んで印象に残った部分を紹介します、ぜひ若い人も手に取って読んでみて下さい。
●宅急便のように形のない商品の場合、ライバルに決定的な差をつけるのに最も必要なのは、「サービスの差別化」である。
●具体的にサービスレベルを表せなければ、いくら他より優れたサービスだといっても、独りよがりにすぎない。そこで具体的にサービスレベルを表す指標を作ることにした。
●サービスを提供する供給者の論理と、サービスを受ける利用者の論理は、正反対の場合が多い。供給者はとかく自分の立場に立って考える。つまり、自分の都合を中心に考えるのである。でも、それは間違っていないか。
●宅急便事業を始めるにあたって私が決断したのは、「サービスが先、利益は後」ということだった。サービスを向上してまず郵便事業などと差別化を図らなければ、結局、利益の上がる事業にはならないと考えたのである。業務会議で「これから収支のことは一切言わない。その代わりサービスのことは厳しく追及する」と宣言した。そして「サービスが先、利益は後」このモットーを金科玉条として守ってほしいと宣言した。
●「サービスが先、利益は後」という言葉は、利益は要らないといっているのではない。先に利益のことを考えるのをやめ、まずサービスを提供することに懸命の努力をすれば、結果として利益は必ずついてくる。それがこの言葉の本意である。
●何でも「第一」の社長は「戦術的レベル」の社長である。うちの会社の現状では何が第一で、何が第二、とはっきり指示できる社長は「戦略レベル」の社長である。社長の役目は、会社の現状を正しく分析し、何を重点として取り上げなければならないかを選択し、それを論理的に説明すること、つまり戦略的思考をすることに尽きる。
●宅急便をそっくり真似して宅配便を始めた会社が、いきなり35社。ヤマトの成功は「クロネコヤマトの宅急便」というコマーシャルにあると思った他社はそれぞれに動物マークを作り宣伝を始めた。1社を除いて撤退。
●宅急便を担う中心的存在は、現場で顧客に接する約3万人のセールスドライバーSDである。彼らは荷物の集配、営業、集金などひとりでさまざまな業務をこなさなければならない。まさに「寿司屋の職人」のような働きが求められる。サッカーで言えば最前線の「フォワード」にあたる彼らのやる気をいかに引き出し、楽しく働いてもらうか。
●「全員経営」とは経営の目的や目標を明確にした上で、仕事のやり方を細かく規定せずに社員に任せ、自分の仕事に責任を持って遂行してもらうことである。社員の自律的な行動に期待するのである。ではどうするか、キーワードはコミュニケーションである。企業の目的を明確化する。達成すべき成果を目標として明示する。時間的な制約を説明する。競合他社の状況を説明する。そして戦略としての会社の方針を示す。その上で戦術としてのやり方は各自に考えさせる。なぜそうするかを納得のいくように説明する。
●組織が大きくなると、社員のやる気を阻害する者が社内にいることが多い。それは往々にして直属の上司であることが多い、特に社歴の長いものは要注意である。こういう社員は経験をもとに仕事のやり方を部下に細かく指示したがる傾向がある一方、会社の方針とか計画がなぜそうなるのか説明するのが苦手だったりする。そうなると、そこで社内のコミュニケーションが途切れてしまうことが多い。社長と第一線の間にある管理職の階層はなるべく少ないほうがいい。
コメント