著者;レイ・ブラッドベリ、1975年に刊行されたSF小説です。
華氏451度とは摂氏233度にあたり、紙が自然発火する温度だそうです。
読書や本の所有が禁じられた近未来の物語で、主人公は「焚書官」として本を焼き尽くす仕事をしています。
2008年にハヤカワ文庫に再収録される際に、ノンフィクション作家の佐野眞一氏が後書きを書いているが、これが秀逸なので紹介します。
未曾有の出版不況により次々と雑誌が廃刊に追い込まれている。
これは国家統制による焚書よりはるかに恐ろしい事態である。
ほかならぬ国民自身が活字媒体に対してNOと意思表示を示したからである。
終戦後GHQが日本占領にあたってとったと言われる愚民化政策の3S政策とは、Screen(スクリーン)、Sports(スポーツ)、Sex(セックス)によって日本国民を骨抜きにしようとした政策のことである。
テレビやインターネットから24時間多様な娯楽が洪水のように流されている。これ以上、必要な情報や知識があるだろうか。そう考える人もいるだろう。
しかし、そんなお仕着せの情報環境にいるからこそ、本や雑誌は必要だ。
人類が営営として築き上げた叡知の結晶の書物を読まない限り、「個」は「個」のままで「類」になれない。
本はよく森や宇宙にたとえられる。一本の樹木では森にならず、一つの星では宇宙にならない。
夜空を見上げると、無数の星がある。その星と星を結んで大熊座とかオリオン座とか名付けたのは、人類の叡知である。
読書とは、無数の星の中から好きな星を選び取って自分だけの星座を作る作業に似ている。
それにはベストセラー本を読むだけでは無理である。
3S政策のScreen(スクリーン)は、現代ではテレビやスマホのことだと思います。皆さんは自由に使える時間をどのように過ごしていますか。
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