4つ目の事例は利害関係者としての従業員の重視というテーマです。
利害関係者というと、顧客、取引先、銀行、株主などイメージが強いですが、従業員の方も重要な利害関係者です。ISO9001の要求事項の一つとして、利害関係者のニーズと期待を理解し、対処することが求められています。近年、労働力の低下により人出不足が深刻化する中で、新たに募集しても応募がないという声をよく聞きます。現実的な対策として、今働いてもらっている従業員の方に、いかに長く働いてもらうかが重要になります。そのためには、重要な利害関係者の一員である従業員のニーズと期待を把握して、対処する必要があります。
•事例4;利害関係者としての従業員の重要視
①従業員がどんなことを考えているか、どのような希望をもっているか、率直に意見を聞く場を作る。
②直接言いづらい場合は、無記名のアンケートを実施し自由に意見を書いてもらう。
③出された意見は、まとめて従業員の方と共有する。
経営者にとって耳の痛い話も出るかもしてませんが、あえて全て提示するのがポイントです。
④その中で、直ちに実施するもの、検討に時間をいただくもの、できないもの・しないものを区別して示す。
何でもかんでもできるわけではない、という姿勢を示すことも大切です。
また、会社の考え方や方針と大きく異なる意見については、一旦受け入れた上で対処方針を明確にしましょう。
⑤実施することを約束したものについては、その進捗状況を随時報告する。
⑥一度実施して終わり、ではなく、定期的に(年1回程度)繰り返して行う。
「従業員意識アンケート」「モラールサーベイ」など、従来から実施はされている会社も多いかと思いますが、どこまでの意見を吸い上げることができていたでしょうか。
ポイントは、いかに従業員のホンネを引き出すかです。
「どうせ言っても変わらない」「変なことを言うと、後が怖い」という諦め感や経営者に対する不信感があると、従業員もホンネを語ってくれません。
経営者や人事労務部門の自己満足にならないよう、実際的な対応が求められています。
以前、審査で訪問したある会社では従業員アンケートの結果を食堂に貼り出していましたが、結構経営者にとって耳の痛い指摘もたくさんありました。その中でこれはすぐにやります、これは少し時間をください、これは今の会社の状況ではできません、など対応の方向性をはっきり書かれていました。日頃からのコミュニケーションができている、いい会社だと感じました。
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