今回は内部監査というしくみについて解説します。
監査というと、会計監査や業務監査を思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれませんが、それぞれ見る視点が異なります。ISOの内部監査とは、ISOの規格要求事項に沿って構築したマネジメントシステム(仕事のしくみ)を、決めたとおりに実施しているか、社員同士で確認を行うことです。
ISOを認証取得している組織では、定期的に外部審査を受けチェックを受けていますが、第三者の目で気がつくことがある反面、短い時間でのサンプリングですのでどうしても見落としがあることは否定できません。社内の業務に精通した社員による内部監査は、より細かく実態に即した監査が期待できます。
ISOの内部監査は「適合性」と「有効性」の二つの視点で監査を行いますが、「適合性」というのは上記のように決めた通り仕事をしているかということです。もし、ルール通りに仕事を行っていない事例を見つけた場合には、「不適合」として指摘し、改善を要請します。一方、「有効性」というのは、今の仕事のしくみで効果が上がっているか、という視点で確認を行います。ルール通り仕事は行っているのだけれど、さっぱり効果が出ていない、ということはマネジメントシステムのどこかに不備があるはずです。そのような事例を見つけた場合には、「改善提案」という形で改善を要請します。この「有効性」を評価するしくみは、会計監査や業務監査にはない特徴だと思います。
ISOをうまく使いこなせていない組織は、この内部監査のしくみが弱いように思われます。内部監査がうまく機能しているかどうかは、検出件数や内容で把握できます。件数が少ない、特に「改善提案」の件数が少ない組織は、PDCAを回してスパイラルアップしてゆくことが難しくなります。
内部監査を行う監査員は、誰でもいいというわけではありません。「内部監査員研修」というプログラムに基づいた教育訓練を行い、内部監査員としての資格認定(社内)された人に担当してもらいます。社外の内部監査員研修に参加させて資格認定する組織も多いようですが、その内容は規格の理解や内部監査の手法が中心です。できれば、社内研修によりISOの規格要求事項に対して自分たちの組織ではどのようなマネジメントシステム(仕事のしくみ)を運用しているのか、具体的に説明することで、「アウトプットの出せる」いい監査員を養成することができます。
{アウトプットの出せる」とは、せっかく内部監査員として参加しても、1件も不適合や改善提案を出せない監査員に対する言葉で、特に改善提案をたくさん出せる監査員を指します。
内部監査員研修は、人材育成の面でも大いに期待できます。会社に入って基本的なことは教育されますが、マネジメントシステム(会社の仕事のしくみ)をきちんと教える場はあまりないのではないかと思います。自分の担当している仕事の前工程や後工程の仕事の内容を知ることで、自分の仕事の見直しにつながります。後工程から見ると、もっとこうした方がいい、この部分はそんなにこだわる必要がない、などという発見があるかもしれません。
内部監査を通じて、会社の仕事のやり方を見直し、より良い会社にしていきましょう。
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