今回紹介する本は、アメリカの経営学者ドラッガー氏の描いた「マネジメント基本と原則」です。とても有名な方ですし、たくさんの名著を出されていますので、御存じの方も多いと思いますが、もしこれまで1冊も読んだことがないという方に、おススメの本です。エッセンシャル版ということで、重要な部分の要約本になっていますので、とっつきやすいのではないかと思います。
このブログは、ISO9001の原則であるQMS(クオリティ・マネジメント・システム)を世の中に広げてゆくことを目的としていますが、QMSを上手に活用することで、「クオリティの高い組織とそこで働く人々の人生のクオリティ向上」を目指しています。そのためには、単に規格要求事項を理解するだけではなく、しっかりとした「考え方」が重要になります。組織運営に関してはこの「マネジメント基本と原則」に書かれている内容を、個人の人生設計に関してはコヴィ博士の「7つの習慣」に書かれている内容を、それぞれ理解し、実践することで大きな効果があると考えています。
ドラッガー氏のこの本は、マネジメントの基本となる考え方をわかりやすく書かれています。初版は2001年発行、元となる本は数十年前に書かれたものですが、ちっとも古臭く感じません。複雑化する世の中で、誤った道に進まないためには「原則」を持っておく必要があります。内容の一部を紹介しておきますので、ぜひ一度手に取ってみてください。
最近は本が売れないので、ブックオフやメルカリでも驚くような安値で売られています。本を読む方にとっては、いい時代かもしれません。
●マネジメントの三つの役割
マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある。それら三つの役割は、異質ではあるが同じように重要である。
①組織に特有の使命を果たす。マネジメントは組織に特有の使命、すなわち、それぞれの目的を果たすために存在する。
②仕事を通じて働く人たちを生かす。現在社会においては、組織こそ、一人ひとりの人間にとって、生計の資、社会的な地位、コミュニティとの絆を手にし、自己実現を図る手段である。当然、働く人を生かすことが重要な意味を持つ。
③自ら社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する。マネジメントには、自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する役割がある。
●事業は何か
「われわれの事業は何か。何になるか。何であるべきか」
これを問うことこそ、トップマネジメントの責任である。
その問いに答えるには、顧客からスタートしなければならない。すなわち顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。企業の目的としての事業が十分に検討されていないことが、企業の挫折や失敗の最大の原因である。成功を収めている企業は、その問いに対する答えを考え、明確化している。
●人材の獲得に関しては、特にマーケティングの考え方が必要である。
「われわれが必要とする種類の人材を引きつけ、かつ引き止めておくには、わが社の仕事をいかなるものとしなければならないか」
「獲得できるのは、いかなる種類の人材か。それらの人材を引きつけるには何をしなければならないか」
●人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは費用であり脅威である。しかし、これらのことゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することである。
●組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。天才に頼ることはできない、天才は稀である、あてにできない。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。同時に、組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。
要するに、組織の良否はそこに成果中心の精神があるか否かによって決まる。
①組織の焦点は、成果にあわせなければならない。
②組織の焦点は、問題ではなく機会に合わせなければならない。
③配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行わなければならない。これらの決定こそ真の管理手段となる。これら人事に関わる決定は、真摯さこそ唯一絶対の条件であり、すでに身につけていなければならない資質であることを明らかにするものでなければならない。真摯さなくして組織なし。
●マネジャーには、根本的な資質が必要である。真摯さである。
学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質は、ひとつである。才能ではない、真摯さである。
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