ISOの要求事項の中でも、この章が最も直接的に仕事に結び付く部分です。
皆さんの本業である製品の製造やサービスの提供について、顧客満足度を高める方法がまとめられています。
1つ目は、顧客の要求事項の明確化です。実際に利用していただく顧客とコミュニケーションを取りながら、どのような製品やサービスを求めているのか、具体的な要求事項を明確にします。ただ漠然と、「他よりも安くていいもの」ではなく、より具体的に、こういうものであれば多少高くでも利用します、というニーズを見つけることが大切です。当然のことですが、ここがビジネスのスタートであり、この点を曖昧にしておくと、他社と似たり寄ったりの製品やサービスしか提供できず、結局は価格競争に巻き込まれて、頑張って売ってもちっとも儲からないという事態になりかねません。また、近年は法律やコンプライアンスについても厳しく問われますので、その点でのチェックも必要となります。
次に顧客の要求事項を満たす製品やサービスをどのように提供するか、設計・開発を行います。建物を建設するためには設計図があるように、仕事を進める上でも設計書が必要です。要求事項を満たすためには、どのような条件が必要か、それを満たすためにはどうすればいいか・・・具体的に詰めていき、最後は設計書に落とし込みます。この作業をだれがいつまでに行うかという管理も必要です。また、担当者が作成した設計図が本当に顧客の要求事項を満たしているのかというチェックも重要です。設計・開発のアウトプットである設計書の出来栄えが、会社全体の成果を決定すると言っても過言ではなりません。設計書の出来が悪いと、いくら頑張って製造しても、いくら一生懸命販売しても利益が出ない、なんてことになりかねません。
製品を作るためには原材料を購入する必要がありますが、その原材料をどのように購入するかについても管理が必要です。信頼のおける取引先から、自分たちの要求する規格に沿った原材料を納入してもらうよう管理を行います。これはサービス提供でも同じです。もし、他社から製品やサービスを購入して利用する場合には、同様に管理を行う必要があります。ISO9001の規格要求事項では、そのための具体的な管理方法が細かく定められています。
いよいよ、製品の製造やサービス提供を行う場面です。規格に合った原材料を仕入れ、設計書に基づき、作業を行っていきますが、担当者による仕事のバラツキが発生しないようにしなければなりません。そのためには、仕事のやり方を標準化し、文書化しておく必要があります。仕事の内容を文書化、マニュアル化するというのは当たり前の話ですが、ややもすると担当者レベルのマニュアルを代々引き継いでいるケースがあります。でもその内容って、会社全体から見たときに最適化されているでしょうか。ひょっとしたら、担当者がやりやすいように変わってしまっているかもしれません。業務の文書化についても一定のルールが必要です。ISOでは文書化についても、さまざまなノウハウが書かれています。
作成した手順書に基づき、教育訓練を行い、仕事に必要な力量を身につけさせます。この点は7章の力量で詳しく解説しています。実際に製品の製造やサービス提供を行う中で、どうしてもクレームやトラブルは避けられませんが、その原因を追及すると、ヒューマンエラーによるケースが多いです。過去の失敗事例を共有するなどして、ヒューマンエラーを予防する工夫も必要です。
製造品については、出来上がった製品の分検査を行い基準に合格したものを出荷しますが、サービス提供についてはどうでしょう。いちいち検査するわけにはいきませんね。それでも何らかの管理方法を決めておかないと、顧客からのクレームが殺到するなんて事態になりかねません。そこでISO9001では、「計画した結果を達成する能力について、妥当性確認を行い、定期的に妥当性を再確認する」ことを求めています。サービスを提供する従業員の力量を定期的にチェックして、目的のサービスをきちんと提供できているか、顧客に満足を与えられる能力があるか、確認を行います。
出来上がった製品を検査して不合格品が発生した場合は、誤って出荷しないよう識別して管理します。よくあるケースとして、せっかく検査で見つけた不合格品をラインのそばに置いておいたために、他の人が誤って元に戻してしまい流出させてしまうことがあります。専用のケースを設けて、混入しないようにしておくことが大切です。
また、発生した不合格品をどのように処理するかも決めておく必要があります。特定の顧客向けの製品で、基準に若干足りない不合格品の場合は、顧客に相談して「特別採用」していただくことも可能かと思いますが、この特別採用(トクサイ)を悪用して不合格品を合格品にしてしまうことのないよう、十分気をつける必要があります。
8章のポイントは以上です。
ISO9001の規格要求上に沿って仕事のやり方を整理し見直しを行いましょう。
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