ISOの基礎知識⑩10章:継続的改善

いよいよISO9001規格要求事項の最後の章になります。PDCAサイクルのA(Action)の段階です。
ISO9001の目的は、顧客満足度の高い製品やサービスを将来にわたって継続的に提供することですが、現状がベストだと思ってしまうと進歩がありません。世の中は変化していますから、当然、顧客のニーズや期待も現在と同じとは限りません。将来を予測しながら改善に取り組んでゆく必要があります。
また、それ以前の問題として、組織を運営しているとさまざまな問題や課題が発生していると思いますが、そのまま放置するのではなく改善に取り組む必要があります。当たり前のようですが、実際にはどうでしょう。わかっていても何となく放置している、同じような問題が繰り返し発生しているなどの場合には、改善が進んでいるとは言えません。
ISO9001では、改善について次のように説明されています。
改善には、修正、是正処置、継続的改善、現状を打破する変更、革新及び組織的再編が含まれうる。
問題や課題のレベルに応じた改善が必要です。

「是正処置」とは、何か問題が起こったときの再発防止策のことです。不良品を出荷してしまった、顧客様から苦情を受けた、社内の検査で不合格品がたくさん出た、ルールとは異なる方法で仕事をしていた…このような状態を「不適合」と呼びます。そのような不適合が発生した場合、まずは「修正処置」が必要であり、不良品を回収する、お客様にお詫びに行き状況を確認する、ルールに沿った方法に戻すなどの対応を取ります。問題はここからです。なぜそのような不適合が発生したのか、原因分析がとても重要です。原因分析が不十分で表面的な修正処置しかしていないと、また同様の不適合が再発してしまいます。「トヨタはなぜを5回繰り返す」という有名な言葉がありますが、表面的な原因の原因、そのまた原因を考えていくと真の原因がわかると言われています。その上でその原因を取り除く対策を考えますが、人が変わっても効果が続くように、しくみを改善することが重要です。不適合の原因の多くは人のミスによるものですが、発生させた当人を𠮟りつけ、朝礼で注意喚起して終わり、では再発防止になりません。

皆さんの会社では社員からの改善提案を受け付ける制度をお持ちでしょうか。制度があるというだけではなく、提案の内容をきちんと評価し、提案者にフィードバックできているでしょうか。審査でいろいろな組織に伺いますが、マネジメントシステムがうまく回っている組織は、従業員からの改善提案が盛んであるという特徴があるように感じます。ISOの原則の一つに「全員参加」というキーワードがありますが、働いている全員が意識し行動するからこそ、うまく機能するということです。これは会社経営でも同じことだと思います。

さて、4章から開始したISO9001の基礎知識も一通り説明が終わりました。
ISOは難しい、理解しにくい、という先入観を持たれる方が、まだまだ多いように感じますが、決してそんなことはありません。規格要求事項が、という形で入ると難しく感じるかもしれませんが、目的である「顧客満足度の高い製品やサービスを提供」するために、どのようなことをすればいいか書かれていると思っていただければいいと思います。その上で、規格要求事項に合わせて仕事をするのではなく、今やっている仕事を基本にして規格要求事項を満たしているか確認し、もし足りなければ付け足すという対応で結構です。
もし、長年ISOに取組んでいるのだけれどいまいち経営的な効果を感じられないという組織の方は、今一度取り組み方を見直してみられることをおススメします。



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