ISO22000の基礎知識①認証取得ブームの背景

このシリーズでは、食の安全に関する規格であるISO22000について、わかりやすく解説してゆきたいと思います。

20年ほど前にISO9001の認証取得がブームとなったように、最近では食品企業の間でISO22000もしくは更に高度な要求事項を含んだFSSC22000を認証取得することが流行りのようになっています。
なぜ、ISO22000(FSSC22000)の認証取得に対するニーズが高まっているのでしょうか。
背景にあるのは、食の安全を脅かす様々な事件の発生です。例えば、2000年低脂肪乳による食中毒事件、2004年牛肉偽装事件、2008年毒入り餃子事件、2011年原発事故による放射能汚染、2013年冷凍食品農薬混入事件、2016年廃棄物業者による廃棄食品の横流しなど、例を挙げるときりがありません。最近では、紅麹を使ったサプリメントによる死亡事故が大きな注目を集めています。
食の安全性を確保するために、世界中でHACCP(ハサップ)の導入が進みましたが、日本では大企業を中心に採用されたものの、中小企業では浸透しませんでした。HACCPとは、後ほど詳しく解説しますが、一言で言うと科学的な視点で食品の安全性を確保する衛生管理の手法です。
世界中でHACCPの導入が進み、HACCPによる食品の製造や加工が当たり前となっている中で、日本だけが取り組んでいないのはどうも都合が悪いということになってきました。特に政府は食品の輸出を拡大しようとしていましたが、いくら日本の食品は安全です、信用してください、と叫んでも通用しません。そこで、2020年に開催される東京オリンピックまでに全ての食品事業者(メーカーだけでなく、流通・小売業を含む)にHACCPを義務付けすることとなりました。事業者の中には家族経営的な規模の方も含まれますが、そのような事業者でも対応できるよう取り組むべき項目の簡素化、業界団体での手引書作成などさまざまな対策を駆使して、何とか実現にこじつけました。ただ、残念なことに新型コロナウイルスの影響で2021年に開催されたオリンピックは無観客で実施され、世界中から集まった多くの人にアピールすることはできませんでした。
それぞれの事業者がHACCPの導入を進める中で、「フードチェーン」という問題が出てきました。いくら自分たちだけ努力しても仕入れる原材料や製品が安全なものでなければ、自分たちが販売する食品の安全性を担保することはできない、ということです。そこで、大手小売業を中心に、取引先に対してHACCPの確実な導入の要請がありましたが、HACCPには認証するしくみがなく、簡単に証明することができませんでした。そこで登場してきたのがISO22000です。ISO22000はHACCPをマネジメントシステムとして認証できるようにした規格です。ISO9001と同じように、年1回専門の審査機関による審査を受けることで、登録証を取引上のパスポートとして利用することができます。
このような背景があって食品メーカーとしてはISO22000(FSSC22000)の認証取得が当たり前、という情勢になってきています。(2024年7月21日)

今回は以上です、次回はHACCPについて詳しく解説します。

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