ISOマネジメントシステムが日本に入ってきて、およそ30年になります。最初はEUへ製品を輸出する際に認証取得を求められたISO9001でしたが、その後、EUへの輸出に限らず企業間の取引上のパスポートとして、製造業を中心に広く利用されるようになりました。また、公共事業の入札条件として、ISO9001の認証取得が採用され、建設業では取得が当たり前であり、一種のISOブームの時代がありました。
その後は2006年頃をピークに認証登録組織は減少傾向にあり、その理由の一つとしては、国土交通省が入札の必須としていたISO9001の認証登録を緩和したことが上げられます。また、食品製造業では食品安全を目的とした規格であるISO220000に移行し、ISO9001を返上する組織も多いようです。
このような経緯を振り返ると、日本におけるISO9001は製造業や建設業ではポピュラーな存在ですが、他の業界の方からすると、聞いたことはあるがいまいちピンとこない存在かもしれません。製品の販売や工事の受注という直接的なメリットがなければ、わざわざ面倒くさい仕組みを作ってお金をかけて審査を受ける必要性を感じられないということでしょう。
ただし、認証登録組織の中には取引先から要請されて義務的に取り組むのではなく、自主的に認証登録している組織もあります。その目的は何なのでしょうか。
ISO9001に取り組むメリットとしては、次のようなものがあげられます。
①国際的なマネジメントシステムの認証登録を対外的にアピールできる(ブランド力の向上)
②業務の標準化、文書化により、業務の属人化をなくす(人によるバラツキ防止、生産性向上)
③結果として、顧客の要求事項を満たしたサービスを継続的に提供できる(サービスの品質管理)
④社員や経営者が替わっても、同じ仕事のやり方を踏襲できる(社員の退職リスク、事業承継対策)
⑤クレームやトラブルの再発防止(原因分析の徹底、是正処置により二度と再発させないしくみ作り)
⑥社員の力量(実務能力)を見える化し、多能化(マルチスキル化)を進める。(生産性向上、働き甲斐向上、有休を取りやすい体制作り)
⑦内部監査やマネジメントレビューを通して、必要な情報が経営者に報告されるしくみができる。
⑧社内外の課題の明確化、利害関係者の期待やニーズの把握などにより、より先を見た経営に取組む機会となる。
かつての取得ブームの時とは異なり、認証取得することが直ちに売り上げにつながる時代ではありませんが、ブランド力の向上は期待できるのではないかと思います。特にこれまでISO9001が知られていない業界では、他社との差別化戦略の一環として活用できるのではないかと思います。
なお、認証取得だけを目的とすることは、かえって逆効果になる恐れがあります。あくまで、事業プロセスと結びついた活動でないと、ISOのための仕事が増えるだけになります。ネットを検索すると、認証取得を代行してくれる会社もあるようですが、そのようなサービスを利用するのは愚の骨頂ですね。
これまで頑張って成長してきた組織が、仕事のやり方を整理し、体系立てたものにすることで、将来的にも持続可能な組織にしてゆく、そのような目的意識があれば、ぜひ取り組まれることをおススメします。
私どものQMS経営研究所では、ISOに取り組む組織のお手伝いをしたいと思っています。
ご興味のある方は、なんでも結構ですので、お問い合わせいただけると幸いです。
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