QMS経営ベーシック⑭人手不足への緊急対策

最近、身近な人から「急に社員が辞めて困っている」、「募集してもいい人が来ない」という声をよく聞くようになりました。少し前の投稿で、QMSを利用した人出不足対策を紹介しましたが、事態を急を要するようです。というのも、QMSの基本的な考え方のひとつは「リスクマネジメント」であり、予めさまざまなリスクを想定し、リスクが現実化しないように手を打つ、万一発生しても被害が最小限になるように対策しておくというものです。社会的に人出不足が深刻化する中で、自社でも起こりうることは当然想像できるはずですが、何となく自社は大丈夫だと考えている経営者の方もまだまだいらっしゃるのではないでしょうか。社員から相次いで退職願が出されて初めて、事の深刻さに気付く、のでは遅すぎます。「人材の流動化」とは聞こえはいいですが、転職のハードルが下がり、要は今いる優秀な社員がどんどん他へ行ってしまう時代だと認識おくべきだと思います。QMSの採用により。人に依存した経営ではなく、しくみによる経営に転換することで、人手不足の時代でも安定的かつ継続的な経営を実現できるものと確信しています。

そうは言っても、今までQMSを構築してこなかった会社で、人手不足に直面して一からシステム構築に取り組んでも時間がかかりすぎます。本来であれば、手順を踏んでシステム構築を行うのが望ましいですが、緊急対策的にどのような対策がとれるか、考えてみたいと思います。
ここでは、社員10人の会社で2~3人の社員が相次いで退職した、募集しているがなかなか条件に見合った人が採用できない、という状況を想定してみます。昭和の時代であれば、残った人で時間外や休日出勤も厭わず頑張ってもらうことも可能でしたが、令和の時代はそうはいきません。そんなことをすると、残された社員は疲弊し、ますます退職者が増えることになりかねません。残業規制も厳しいですから、これまでと同様のアウトプットを出すためには、業務を効率化し生産性を向上させてゆくしかありません。

①仕事の棚卸と優先順位付け
10人規模の会社であれば、経営者の方は社員がどんな仕事をしているか、だいたいは把握できていると思います。ただ、具体的に何を目的にどんな方法でやっているか、時間はどのくらいかかっているかまでは十分わかっていなないのではないでしょうか。社員にヒアリングして、仕事の内容や時間を確認し、仕事の優先順位付けを行いましょう。会社として最重要な仕事、会社を継続するためには必要な仕事、余裕があればする仕事、あまり意味のない仕事などに分類します。仕事に熱心な社員ほど、自分のこだわりで仕事をしています。ひょっとしたら、やらなくてもいい仕事が見つかるかもしれません。あまり重要でない仕事に時間をかけすぎているかもしれません。社員の方からも、前任者からの引継ぎでやっているけれど、ムダだと感じている仕事がないか提案してもらってもいいと思います。結果的に、会社として儲からない仕事、付加価値のつかない仕事は、この際思い切ってその仕事を断ることも必要になってくると思います。

②仕事の標準化と文書化
次に、残った仕事について「標準化」を行います。これは、複数の人で行っている場合であれば、それぞれの仕事のやり方を比較し、一番いい方法に統一するという考え方です。そして、その方法をわかりやすく文書化します。これは一人だけで行なっている仕事も同様です。担当者のやり方に任せるのではなく、文書化し見える化することで、ひょっとしたら会社全体から見ると、必要でない部分や改善すべき部分が見つかるかもしれません。部分最適ではなく、全体最適の観点で仕事を見直すということです。また、文書化しておくことで、将来その社員が退職した場合のリスクヘッジになります。社員の持つノウハウを文書化することで、会社の資産として利用可能になります。今までのように優秀な社員をどんどん採用できる時代ではないことを再認識し、普通の人あるいはそれより少し劣る人でも同じように仕事ができるよう、環境を整えてゆく必要があります。

緊急対策として何とかしのぎながら、少し余裕が出てくれば、次の方法に取組みましょう。

③社員の力量評価と多能化
上記で整理した仕事に対して、それぞれの社員がどの仕事ができるかという力量評価を行います。S:熟練者、A:一人前、B::半人前、C:できないの4段階で判定する場合が多いようです。縦に仕事(力量)、横に社員名を入れたマトリクス表を作り、それぞれA~Cで評価した結果を記入したものを「力量表(スキルマップ)」といいます。この表を作ると、社員の力量が一目瞭然です。この表は作成して終わりではなく、次の段階としては「多能化」の検討を行います。文字通り、一人でいくつもの仕事ができる人材に育てるということです。特に、重要だけれどできる人が1人しかいない仕事は、その人が辞めてしまうとたちまち困ることが予想されますので、優先して取り組んだ方がいいと思います。本来であれば、多能化教育は余裕のある時に取り組むべきものであり、ただでさえ人が不足している組織の場合、社員からの抵抗も予想されます。忙しいのに、これ以上何をやらせるんですか!と言われそうです。多能化によって報酬が増えるとか、有休がとりやすくなるとか、社員のメリットと結びつけながら進めるのが肝要です。

とりあえず、3つ取り上げてみましたが、QMSのほんの一部です。少しでも参考になれば、幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次